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訪日外国人が変える都心のマンション事情

公開日:2018年8月28日

マンション)
浅草の国際通り沿いで建設中のホテル

伸びる訪日外国人客 2018年中に3000万人突破も

2018年8月8日木曜日。台風14号が関東地方に進路を向け終業時間を早めるなど多くの企業が対応に追われました。翌日に備えホテルを予約しようとした人も多かったのではないでしょうか。筆者も翌朝の予定のため都心のホテルを予約しようとした一人でしたがどこも満室。10件超のホテルに電話で問い合わせようやく秋葉原で1室を確保することが出来ました。12.5㎡の広さの部屋の宿泊料は需給要因もあって1万3,200円。オープン2年目で室内は快適でしたが宿泊特化ホテルとしては、それなりの価格と感じました。こうしたピークの際に予約が取れないのは、地方都市でも珍しくありません。その要因として訪日外国人旅行客の増加が挙げられます。

訪日外客数の推移(日本政府観光局 (JNTO) 発表統計より作成))
訪日外客数の推移(日本政府観光局 (JNTO) 発表統計より作成))

この15年間で訪日外客数は増加トレンドにあり2018年1月~6月の半年間は、昨年対比15.6%アップの1589万人(出典:日本政府観光局)。年間3000万人超の訪日外客数も視野に入ってきました。2003年における訪日外客数が521万人なので15年間で6倍近くにもなる計算になります。ビザの緩和やPRなどの海外向けの施策に加え、LCC普及による航空運賃の低下が日本を訪れるハードルを下げ、アジアの近隣国中心に訪日客が大幅に増加しました。

2017年(2869万人)の訪日上位国は、中国(735万人)・韓国(714万人)・台湾(456万人)・香港(223万人)となっておりアメリカ(134万人)を大きく引き離しています。観光庁の宿泊統計調査(速報値)によれば、2018年6月の外国人の宿泊数は761万人泊で前年同月比21.6%アップ。こうした、訪日外国人の増加は都心のホテル開発動向にも影響を与えています。

2020年を見据えホテル建設相次ぐ 容積率の緩和など東京都も後押し

外国人旅行者が東京で訪問した場所(平成29年国別外国人旅行者行動特性調査)は、新宿・大久保(56%)、銀座(49.7%)、浅草(45.7%)、渋谷(42.6%)、秋葉原(39.0%)の順となっており山手線や地下鉄でアクセス可能な都心エリアに集中しています。さらに原宿・表参道・青山(33.7%)、上野(33.7%)、東京駅周辺・丸の内・日本橋(33.5%)と続くきます。都心エリアに滞在拠点を置けばかなり効率的に周遊することが可能で、コンパクトシティ東京ならではの魅力でしょう。

訪日外国人が訪問した場所(複数回答 単位%:平成29年国別外国人旅行者行動特性調査)
訪日外国人が訪問した場所(複数回答 単位%:平成29年国別外国人旅行者行動特性調査)

外国人の買い物客で賑わう銀座や仲見世や浅草寺などの観光スポットが豊富な浅草を歩くと多くのホテルの建設現場を発見します。東京都では、2020年を見据え都市開発の運用基準を改め都心エリアなどの指定された地域で宿泊施設の床面積相当分の容積率割増などによってホテル建設を促進しています。銀座や外国人に人気の観光スポットも豊富な浅草・上野地区は、この施策の対象となる都心等拠点地区・複合市街地ゾーンに指定されており様々な企業がホテル事業を進めています。

浅草では、松竹が六区ブロードウェイに面した敷地に(仮称)浅草ビューホテル別邸”HAKARAI”の建設(約200室)に着手。国際通り沿いの西浅草3丁目では、三菱地所が2018年秋に166室のホテルを開業予定。他にも複数のプロジェクトが進行中です。上野界隈では、野村不動産のホテル新ブランドNOHGA HOTEL(ノーガ ホテル)」第1号が2018年秋に開業予定。中堅ディベロッパーのコスモスイニシアがアパートメントホテルを上野でオープンするなど新規の参入も目立ってきています。秋葉原~上野界隈は、宿泊ニーズの高さから新規の建設だけでなく、中規模オフィスをコンバージョンしてホテルに転用するプロジェクトも目立ちます。

ホテル用地との競争激化で都心のマンション供給は難しくなる

東京都の施策などもあり都心立地での事業性は、ホテルの方が高くなっています。例えば先ほどの秋葉原のケースでは、秋葉原の築年数の浅い25㎡台の1Kタイプの賃料は14万~15万円程度。一方ホテル1室(12.5㎡)の売上は25日稼働したとして33万円。25㎡の1Kタイプのマンションと面積差を考慮し2倍にすると月額66万円になります。繁閑の価格差や建築費・運営コストがホテルの方が高いことを考慮してもホテルの方が事業性は有利に感じます。

スマホによる地図検索が容易になり今までマンション供給が目立った視認性の悪い場所でもホテルを運営しやすくなりました。これからは、ホテル需要の高い場所で分譲マンションを手の届きやすい価格で供給することは難しくなるかもしれません。さらにマンション建設抑制の動きも出てきています。居住用の建物に容積率を緩和する施策を採用し人口が増加した中央区では、定住者を増やす成果が出たということで、「定住人口の回復に伴い、住宅の確保による容積率の緩和を廃止する」「一定規模以上の客室や、まちににぎわいをもたらす施設を設けた良質なホテル計画について、容積率を緩和する」といった地区計画の変更を予定しています。こうした施策の実施は、中央区内でのマンション開発抑制につながりそうです。

海に囲まれた日本は、時間的・経済的制約があり訪ねにくい国の一つでした。スマホを片手に旅をする人が多くなった今、情報や言語の障壁も随分と小さくなり世界的な旅行需要の拡大を考えると3000万人の訪日外客数は通過点と考えた方が良いでしょう。観光庁発表の訪日外国人消費動向調査によれば2017年の訪日外国人旅行消費額は、過去最大の4兆4,162億円にも上ります。一方で、国内の宿泊需要は伸び悩んでおり平成29年度の国内実質GDPが533兆円であることを考えると訪日外国人旅行消費額が占めるGDPシェアは現時点で1%未満となっていますから経済全体への影響は過大に評価しない方が良いと思います。

世界的にも人気のある観光都市京都の中心部のマンションは、既に手の届きにくい価格になっています。ホテル建設がしやすくなった渋谷・新宿・池袋といった大都市周辺と品川~上野間や晴海・月島などの臨海エリアは、街のカタチを徐々に変えて行くでしょう。都市のグローバル化が進んでいく中、インバウンドの活性化はマンション市場に様々な影響を与えます。これから都心でマンションを検討する際には、需給バランスとともに生活環境面への影響も踏まえて選択することが大切になるのではないでしょうか。

岡本郁雄(おかもといくお)

著者プロフィール
 岡本郁雄(おかもといくお)

ファイナンシャルプランナーCFP®、中小企業診断士、宅地建物取引士。不動産領域のコンサルタントとして、マーケティング業務、コンサルティング業務、住まいの選び方などに関する講演や執筆、メディア出演など幅広く活躍中。延べ3000件超のマンションのモデルルームや現地を見学し、マンション市場の動向に詳しい。神戸大学工学部卒。岡山県倉敷市生まれ。

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出典元:マンションサプリ